【 低栄養で高亜鉛についての調査 】
血中のALB値(体蛋白)が低いのに亜鉛値がとても高く褥瘡があるなど、
不可解な血液検査結果を得たので、調査した結果をまとめて報告します。
< 亜鉛について >
体内での亜鉛)
インスリンなど約300種類ほどの酵素成分として重要。
体重70kgの男性体内の総亜鉛量は1.4〜2.3g。
亜鉛の排泄)
糞便中へ排泄が多い。
未吸収の亜鉛や、腸管粘膜の脱落、
膵液の分泌などに伴う、体内亜鉛(内因性亜鉛)の排泄。
尿中への亜鉛の排泄は少なく、摂取量に関わらず、ほぼ一定。
存在場所 )
生体内では皮膚に最も多く存在し、全体の20%以上を占めている。
その他、頭髪、爪、目、前立腺、男性生殖器などにも含まれる。
肝臓、骨、血液中にも微量存在。
また、約300種の酵素が、機能発現の為に亜鉛を必要としている。
亜鉛の役割)
亜鉛は、コラーゲンを生成するコラゲナーゼ活性に関与し、
皮膚および頭髪の正常な形成にとって必要である。
また、抗酸化剤としても作用する。
亜鉛は赤血球から二酸化炭素を転送するために必要であり、
この働きにより、 体の隅々まで酸素を供給することになる。
また、蛋白質およびDNAの合成、生殖器官の発育と機能、
創傷の治癒、インスリンの貯蔵と機能、味覚に関与。
炭水化物、脂肪、蛋白質の代謝は、亜鉛依存性酵素を必要とする。
亜鉛の検査の注意事項
ALB2.9mg 亜鉛131μg/dl(褥瘡あり・末期癌)
「褥瘡や低栄養では、低亜鉛になっているはず」
という予想を大きく裏切った検査結果
↓
検査結果を誤らせた原因を調査
まず、検査ミスが疑われましたが、取り扱いは全て守られており、
検査室のせいではありませんでした。
次に、薬剤が疑われましたが、薬局の証言でそれも無いと判りました。
次に食事が疑われましたが、給食で亜鉛強化はしておらず、
栄養科も無関係と証明できました。
次に持ち込みが疑われましたが、看護部の証言でそれは無いと判りました。
また、総入れ歯なので、歯の治療による影響も無いと判りました。
その後も検査確認を続けると、低栄養で高亜鉛が複数確認できました。
ここまで来ると看護部が「亜鉛など検査しても無駄!」と怒り出しました。
検査項目や病状などの条件に連動するものがないか243件を確認したところ、
明らかな低栄養(ALB3.0mg未満)・高亜鉛(Zn80μg/dl)と、
全て連動したのはCRPだけでした。
条件を、亜鉛70μg/dl以上 ALB3.5未満(NO.22まで)で確認すると、
上記の通り、低ALB(水色)の左隣は、高CRP(ピンク)でした。
どうして、この様な事が起こったのか、どうしても知りたくて、
しつこく調査をしては、野本先生に質問を重ねてご迷惑をおかけしました。
「全血放置による亜鉛値の上昇」から、
血管内で血小板が刺激されて活性化したら、
「血漿中に亜鉛の放出が起こる可能性がある」
という仮説を教えて頂きました。
確認試験できないのは残念ですが、
「低栄養で高亜鉛が起こる理由」について、
3年間しつこく追いかけて調査した中、
初めて納得するに至りました。
検査値を基準値から判定できない可能性のある亜鉛ですが、
もしかしたら、CRPやWBCでは判らぬような、
ストレスのような「炎症反応」を即時確認できるのでは?と想像すると、
メタボリック予防に役立つのではないかと可能性を考えました。
(そして低亜鉛時には、乳酸菌酸性物質も効果的ではないかと)
調べたところ「MCP−1」は通常では検査できぬようですので、
もし、MCP−1が血清亜鉛と連動している事が判った場合には、
亜鉛とメタボリックの研究がもっと進むのではないかと想像しました。
確認試験できませんでしたので、
想像ばかりで申し訳ございません。